庭木に仕立てているモモが徒長気味です(写真1)。果実の収穫が目的の果樹園と異なり、庭木は樹形が美しいことが最優先されます。そこで今回は、来年の収穫は多少犠牲になり、危険も伴いますが、整姿と生育の調節を行いました。 まずは間引き剪定です。間引き剪定とは、採光・通風を計るために、混み合っているところの小枝を整理することです。 基本的に、枝の生育は、上部のものほど旺盛で、下部になるほど弱まります。特に樹形作りにおいては最下部の枝、つまり一の枝を衰弱させないことが大切です。 この木の場合でも、一の枝はその上に伸び出した枝の繁茂によって、同化作用が妨げられ弱り始めているようです(写真2)。 そこで、写真3のように、まず一の枝の上に混み合っている小枝を間引き、日光と風がよく当たるようにしてやりました。一の枝を中心に考えますと、もう少し空間を大きくとってやりたいのですが、この時期あまり枝を切り詰めますと、木はバランスを乱して徒長枝を多発させる危険があります。 次は、環状剥皮です。写真4・5のように、2ミリくらいの狭い幅で樹皮を剥ぎ取ります。これによって、処理した枝の生長が抑制されます。 葉によって作られた養分は、樹液によって枝や幹を通り根に届けられますが、環状剥皮によって樹液は根に届けられなくなります。部分的に見ますと、環状剥皮をした部分から上の枝に養分が蓄積するので、枝にとって良いことのように思われます。しかし、芽が伸び出すには、根から送られる生育促進物質(植物ホルモン)が必要ですので、これが届かなくなると、処理枝にとってはパニック状態が生じます。 この状態を続けますと、処理枝は衰弱枯死するので、一定期間を過ぎると環状剥皮をした部分が癒合し、樹液が再び正常に流れるようにしなければなりません。 それに配慮して、樹皮を剥ぐ幅を狭くし、癒合が確実になるようにしたのです。処理部には、保護のために保護剤のトップジンMを塗っておきました(写真6)。 最後に、上部の徒長枝の先端部を摘み取る程度でこの時期の調整を終えます(写真7)。 と言いますのは、7月に入りますと花芽分化が始まります。花芽分化が行われる枝の状態としては、伸長が停止していることと、充実していることが大切な条件です。今、強い剪定をすると、伸長を止めていた枝が伸び出してしまい、結果として花芽分化を妨げることになるのです。徒長している枝は「遊び枝」としておきましょう。 参考までですが、この木の場合には結実がみられません。原因は、発芽前(2月)に基本的な樹地作りを優先した、強剪定をしたことです(写真8)。それにより、木が元の樹形に復元しようと、栄養生長つまり徒長枝をたくさん発生させることを優先し、果実を育てることを後回しにしたようです。 このことは、花芽分化にも通ずることなので、これから落葉するまでは、樹形が乱れても強い間引きや切戻し剪定は避けて、花芽を正常に休眠状態に入らせてやりましょう。
果樹の鉢栽培では、枝数によって根からの養分の供給に限界があるため、無駄なく枝を活用することが大切です。特に樹形の基本となる主枝作りの段階では、優劣を生じさせないように心掛けることが大切です。写真1は、3月にご紹介したスモモの今月の状態です。 3月の状態は、3本の主枝が仕上がった状態に整えましたものでしたが、新芽が伸び出した状態で問題が起こりました。 一番太くて元気だった右の枝が徒長しそうだったので、先端部の芽を摘み、斜め上に伸びていた枝を横に倒しました。 その結果、写真のように、右の枝の勢いは抑制され、最も弱い枝だった中央の枝から、最も元気な新芽が伸び出しており、左の枝もそれに次いで元気になっています。枝の角度が生長に影響を与え、中央の直立している枝が最も旺盛な生育を示し、左の斜めの枝がそれに次ぎ、横に倒された右の枝は生育が抑制されているのが分かります。更に下に曲げると衰弱が酷くなることでしょう。 作業にあたっては、枝を傷めないように注意します。特に枝分かれしている部分から裂けることに注意が必要です。そのためには、分岐している部分をしっかり補強してやることが必要になります。 今回の場合には、要所要所をしっかりしたネットに結わえてあるので、特に分岐部の補強はしませんでした。 ネットはこれからの枝の誘引にも便利です。今回は枝が細いので、簡単に曲げられましたが、太いものでは曲げにくいだけでなく、傷つける危険があります。 そうした場合には、曲げたい部分の下部(曲げる内側)にノコギリなどで切り込みを入れると、作業がスムーズに行えますし、枝の勢いを抑制することにもつながります。 なお、傷口が大きい場合には、トップジンなど傷口保護剤をつけておきましょう。 これからの管理ですが、3本の主枝の勢い(太さ)が似通ってきたら、目的とする状態に枝を整えます。今月から来月にかけては、新芽の発生が見られることでしょうが、あまり神経質にならず、放任しておくつもりです。 というのも、枝の中ほどから基部にかけて短い枝がたくさん出ていますが、これらは7月から花芽分化を始めると思われるからです。 花芽分化するには、枝が伸長を停止し、充実していることが前提となります。 根は旺盛な活動をしているので、もしも徒長している先端部の枝を切戻したり除去すると、そのショックで花芽分化をしようとしている枝の先端から、新芽が伸び出すことがあり、それで花芽分化が阻害されます。 若い木や肥料分に恵まれた木は勢いが強く、徒長枝をよく発生させますが、夏の間は「息抜き枝」として暴れさせてやりましょう。 なお、肥料(追肥)も梅雨以降は控え、葉の緑が薄くなる位にして期を落ち着かせるように心掛けます。 特に肥料分不足で葉が黄化しているような場合には、薄い液体肥料を与え、長期間影響が残らないようにします。